簡単、美味しい、ヘルシー
ケフィアはロシア・コーカサス地方で伝統的に飲まれてきた発酵乳です。すぐれた健康効果から世界中で親しまれています。
ケフィアの種菌は『ケフィアグレイン』と呼ばれるポップコーンのような形の結合体となっています。ケフィランという多糖類の粘性物質に、複数の乳酸菌と酵母が絡まり、 さらに乳タンパクなどが包み込まれたものです。このケフィアグレインこそが、ケフィアとその他の発酵乳との大きな違いを生み出しています。
ケフィアは、ヨーロッパ東部の黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈がそびえる、ロシア南西部コーカサス地方(グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン)で生まれた発酵乳です。
コーカサスの山岳民族は、水分補給のために古くから山羊や牛、羊の乳を皮袋に入れ飲んでいました。山で絞った牛やヤギの乳を皮袋に入れ、それを馬の背に乗せて帰る間に、乳が日光で温められながら撹拌され、夕方になり気温が下がると冷やされてケフィアが生まれたともいわれています。
伝統的な製法では、ミルクとケフィアグレインを入れた山羊皮の袋を出入り口付近に吊るしておきました。人々が出入りする度に袋に触れたり、ドアの開閉で揺れたりするため、乳とケフィアグレインが混ざり続け、撹拌されてうまく発酵しました。
一説には、紀元1世紀頃、予言者マホメットがイスラム教を布教する際に、ケフィアグレインを“霊品”としてコーカサス地方の人々に配りながら、ケフィアの製法を教えて回ったと伝えられています。そのため、イスラム教徒の間では、ケフィアグレインを「予言者の黍(きび)」と呼ぶ人も少なくありません。
このように、ケフィアはかなり古い時代からコーカサス地方の人々に伝統的に受け継がれてきたのです。
ケフィア発祥の地であるコーカサス地方は、パキスタンのフンザ地方、南米エクアドルのビルカバンバとともに「世界三大長寿地域」の一つとされています。
コーカサス地方では 100 歳以上になっても山岳地帯で元気に暮らしている老人が多く、そのコーカサス地方でケフィアが伝統的に食されてきたことから、 研究者らがケフィアの機能性に着目し始めました。すると、ケフィアには、複数の乳酸菌と酵母が共生発酵していることが分かり、大変珍しい発酵乳として注目されるようになったのです。
ケフィアの存在が、広く世界各国で知られるようになったのは、1970 年 ~ 80 年代にかけてのことです。 そのきっかけとなったのが、1978年にパリで開かれた「第20回 国際酪農会議」です。この会議で、旧ソ連の総連邦酪農科学研究所のリパトフ教授が、「ヨーグルト以外の発酵乳」という特別講演を行い、ケフィアの有用性について研究結果が発表されました。 さらに、その4年後の「第21回 国際酪農会議」には、旧ソ連医学アカデミー栄養研究所のサムソノフ教授らが、ケフィアを使った臨床試験に大きな成果があったことを報告しました。これを機に、一躍ケフィアは、全世界中の酪農学者や専門家たちから大きな注目を浴びる存在になったのです。
ケフィアグレインには多くの種類の菌が含まれています。含まれる菌の種類がヨーグルトとは大きく違います。ヨーグルトは、1 〜 3 種類の乳酸菌が含まれるもっとも一般的な発酵乳です。
『カスピ海ヨーグルト』は、2002 年に発売されたホームメイドヨーグルトで、現在はコンビニでも購入できるほど人気になりました。ケフィアと同じコーカサス地方で生まれ、ヨーロッパ東部の黒海とカスピ海に囲まれた場所ということで「カスピ海ヨーグルト」と日本で名付けられたようです。
カスピ海ヨーグルトは、クレモリス菌(乳酸菌)とアセトバクター菌(酢酸菌)の 2 種類で発酵します。クレモリス菌がカスピ海ヨーグルト特有のねっとりとした食感を生み出します。
ケフィアとカスピ海ヨーグルトは共に 20 °C ~ 30 °C で発酵するため、一般家庭での手作りが容易なのがメリットです。
ケフィアは、複数の乳酸菌と酵母が一緒に発酵しています。電子顕微鏡写真を見ると、真ん中あたりに見える大きな楕円形のものが酵母で、他にもウリの形やレモンのような形をした数種の酵母が見えます。周りに細かく見えるのが乳酸菌ですが、長桿菌や短桿菌の他、球菌などが確認でき、多くの種類の乳酸菌が存在することがわかります。ケフィアには4種類以上の乳酸菌と3種類以上の酵母が共生していることが確認されています。
ヨーグルト | ケフィア豆乳ヨーグルト | カスピ海ヨーグルト | |
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食品の種類 | 発酵乳 | 発酵乳 | 発酵乳 |
発酵様式 | 乳酸菌の単独発酵 | 乳酸菌と酵母の複合(共生)発酵 | 乳酸菌と酢酸菌で発酵 |
菌の種類 |
1 ~ 3 種類の乳酸菌
など |
4 種類以上の乳酸菌と 3 種類以上の酵母 乳酸菌
酵母
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1 種類の乳酸菌と 1 種類の酢酸菌
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発酵温度 | 40 ~ 50 °C 発酵器が必要 | 20 ~ 35 °C 室温で発酵可能 | 20 ~ 35 °C 室温で発酵可能 |
食感 | カード(固まり)が固く重厚感がある | カードが柔らかくさらっとしている | カードがねっとりしていて重厚感がある |